- 納棺師がきついと言われる理由が分かる。
- 臭いへの耐性が必要であることが分かる。
- 納棺師は給料が低い傾向にあることが分かる。
- 納棺師がきついだけの職業ではないことが分かる。
- 納棺師に向いている人・向いていない人の特徴が分かる。
納棺師の仕事ってきついの?
そんな噂を聞いたことがあるかもしれません。
長時間の立ち仕事や棺の搬送に加え、遺体に触れる仕事ならではの独特な臭いや精神的負担があります。
「納棺師向いてる人ってどんな人なんだろう?」「自分には務まるのかな?」と、求人情報や体験談を見ても不安になる方は少なくありません。
実際、納棺師はきついのでしょうか?
そう言われる主な5つの理由について、お伝えしていきます。
もしあなたが少しでも納棺師の仕事に興味を持っているなら、知識や情報を頭に入れておきましょう!
納棺師がきついと言われる理由とは?
納棺師は亡くなった方の旅立ちを整える大切な役割を担っています。
その一方で、納棺師の仕事は「きつい」と言われることが少なくありません。
どうしてなのでしょうか?
主な理由は次の5つです。
- 体力的にきつい仕事だから
- 遺体の臭いに耐えなければならないから
- 状態の悪い遺体も扱わなければならないから
- 精神的な辛さも伴うから
- 給料が低い傾向にあるから
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
① 体力的にきつい仕事だから
納棺師は立ちっぱなしになる場面が多く、さらに棺や道具を運ぶための力仕事も避けられません。
故人の搬送作業では複数人で行うとはいえ、重量があります。
特に夏場は暑さで体力が奪われるため、体にかかる負担は想像以上です。
汗だくになりながら搬送や準備を行う必要があります。
納棺の儀式は細やかな作業が多く、着付けや化粧直しなどで中腰になる時間も長くなります。
こうした姿勢を長時間続けることで腰や膝を痛める人も少なくありません。
体力がある人でも慣れるまでは、筋肉痛や疲労感を抱えながらの勤務になるでしょう。
そのため、現役納棺師の多くは、日常的に運動やストレッチを取り入れ、体調管理に努めています。
体力が十分でないと、納棺師の仕事はきつく感じるでしょう。
② 遺体の臭いに耐えなければならないから
納棺師の現場では、故人が亡くなってから時間が経っている場合や、夏場には独特の臭いが発生します。
マスクをしたり、防臭対策を施しても、完全に臭いを消すことはできません。
そのため、慣れないうちは臭いに強いストレスを感じるでしょう。
多くの納棺師は「経験と時間で慣れる」と口を揃えます。
なので、数週間〜数か月で慣れる人も少なくありません。
最近は防臭技術や処置方法の進化により、以前よりは臭いの影響が軽減されつつあります。
それでも、臭いへの耐性は必要です。
独特の臭いに耐えられるかどうかは、納棺師として続けられるかどうかの大きな分岐点となるでしょう。
③ 状態の悪い遺体も扱わなければならないから
納棺師は自然死だけでなく、事故や変死、病死などあらゆる亡くなり方に対応します。
状態の悪い遺体も扱わざるを得ないのです。
中には外傷が激しい場合や腐敗が進行している場合もあり、経験が浅い人にとっては精神的衝撃が非常に大きいです。
状態の悪い遺体は、状態をきれいに整えるために高度な修復や整形の技術が必要になります。
皮膚の補修、顔の形を整える処置、傷跡を隠すメイクなど、細かい作業を集中して行います。
一度の処置に数時間かかることも珍しくなく、精神的にも肉体的にも負担が大きいです。
それでも、遺族が安心してお別れできるように整えることが、納棺師の大きな使命です。
精神的に強くなければ、状態の悪い遺体を扱い続けるのは容易ではありません。
損傷の大きい遺体を扱わざるを得ないのも、納棺師がきついと言われる要因の一つなのです。
④ 精神的な辛さも伴うから
納棺師は遺体と向き合うだけでなく、深い悲しみの中にいる遺族とも接します。
お別れの場では涙や悲嘆があふれ、感情移入してしまうこともあります。
特に若い方や子どもが亡くなった場合は、精神的負担が非常に大きくなります。
しかし、どんな場面でも冷静さを保ち、儀式を滞りなく進める必要があります。
感情を過度に表に出すことはできず、それでいて遺族に寄り添う姿勢も求められます。
このバランス感覚は、経験を積むことでしか身につきません。
感情のコントロールとプロとしての判断力を同時に求められるため、精神的な辛さを伴うのです。
⑤ 給料が低い傾向にあるから
納棺師の平均年収は約300〜400万円とされ、労働時間や精神的負担に比べると高いとは言えません。
特に新人時代は年収が300万円を下回ることも多く、経済的な面で不安を感じる人もいます。
給与が低い理由は、葬儀業界全体の利益構造や、納棺師が必須資格のない職種であることが関係しています。
ただし、経験を積み、技術力や接遇力が高く評価されれば、昇給や役職手当によって、給料が上がります。
中には、独立して収入を大きく伸ばす人もいます。
給料が低い傾向にあることも、納棺師がきついと感じる要因の一つになっています。
納棺師がきついだけではない要因は?
先程のセクションでは、納棺師のきついと言われる理由について、お伝えしてきました。
その一方で、きついだけの仕事ではありません。
納棺師の仕事は、どういった点に魅力があるのでしょうか?
主な魅力は次の3点です。
- 遺族から感謝の言葉をもらえることが多い
- やりがい・充実感がある
- 命の尊さを感じることができる
それぞれについて、見ていきましょう。
① 遺族から感謝の言葉をもらえることが多い
納棺師として働く中で最も心に残る瞬間の一つが、遺族から直接感謝の言葉をいただく場面です。
悲しみに包まれた空間の中で、感謝の言葉をもらえると、自分の仕事が誰かの心の支えになったことを強く実感します。
きつい仕事が多い中でも、納棺師を続けるための大きな原動力となるでしょう。
感謝は言葉だけでなく、式の後に手紙をいただくこともあります。
中には、「あなたが担当してくれたおかげで救われました」と訪ねてくれる遺族もいます。
一度きりの関係になりやすい葬儀業界でも、特に深いご縁として心に刻まれるでしょう。
体力や精神面で大変なことも多い仕事ですが、その分、深い感謝を受け取れる職業でもあるのです。
感謝されるたびに、「やっていて良かった」と心から思えるのが納棺師の魅力です。
② やりがい・充実感がある
納棺師の大きなやりがいの一つは、故人を綺麗な状態でお見送りできた時に感じる充実感です。
特に状態の悪い遺体を、技術と心を込めて安らかな表情に整えたときの気持ちは他では得られません。
例えば、事故や病気で外見が大きく損なわれてしまった場合、特殊メイクや修復技術を駆使して自然な顔立ちを再現します。
繰り返しになりますが、遺族から感謝をもらえる瞬間は、この仕事の醍醐味です。
難易度の高いケースほど、終わった後の安堵感とやり切った気持ちは強くなります。
単なる自己満足ではなく、遺族の心を癒やし、記憶に残るお別れを作ることにつながります。
大変な作業を終えた後の充実感があるからこそ、多くの納棺師はこの仕事を続けられるのです。
③ 命の尊さを感じることができる
納棺師は日常的に「死」と向き合う職業であり、人生観に大きな影響を与えます。
多くの人の最期に立ち会うことで、当たり前の毎日がどれほど尊いかを実感できるようになります。
例えば、若い方や子どもを送り出す場面では、命の儚さを痛感します。
その一方で、高齢で穏やかに旅立たれた方の納棺では、「長く生きることの価値」や「人生の積み重ねの重み」を感じることができます。
上記のような経験を繰り返す中で、「今を大切にしよう」という気持ちが強くなる納棺師が多いです。
家族や友人との時間をより大事に過ごすようになったり、日常の小さな出来事にも感謝できるようになるのです。
精神的には負担も大きいですが、この職業で得られる命の尊さへの理解は何物にも代えがたい財産と言えるでしょう。
結果的に、自分自身の生き方や人との関わり方が大きく変わるきっかけになるのです。
納棺師に特別な資格は不要
納棺師になるために、国家資格や特別な免許は必要ありません。
必要なのは、遺族に寄り添う姿勢と、丁寧に作業を行うための集中力と忍耐力です。
未経験でも葬儀社や専門研修で、基本的な技術を学ぶことができます。
実務を通してスキルが向上し、着付けやメイク、遺体処置など幅広い分野の技術が身につきます。
資格不要であるため、異業種からの転職者も多いのが特徴です。
介護職や美容師経験者など、人と接する仕事をしてきた人は特に活躍しやすい傾向があります。
努力次第で役職や給与も上がり、独立してフリーランスとして活動する道も開けます。
つまり、この職業はやる気と誠意さえあれば、誰にでもチャンスがある仕事なのです。
超高齢化社会で納棺師の需要は増加
日本は世界でも有数の高齢化社会であり、葬儀件数は増加傾向にあります。
それに伴い、納棺師の需要も年々高まっています。
特に地方では慢性的な人手不足が課題となっており、経験豊富な納棺師は引く手あまたです。
都市部でも安定した仕事量が確保できるため、長く働ける職種といえます。
また、人口動態の変化により、今後数十年は需要が減る見込みがほとんどありません。
技術を持つ納棺師は他の葬儀関連業務にも携われるため、活躍の場が広がります。
安定した需要があることは、納棺師の仕事の大きな魅力です。
超高齢化により需要が見込まれるため、将来を見通しやすい職業と言えるでしょう。
納棺師に向いている人・向いていない人
納棺師は、誰でもできる単純作業ではありません。
一見すると、遺体の身支度を整える技術的な仕事に見えるため、誰にでもできると思われやすいです。
しかし、実際には体力・精神力・対人スキルが求められる専門職です。
では、どんな人が納棺師に向いていて、向いていないのはどんな人でしょうか?
それぞれの特徴を具体的に見ていきましょう。
納棺師に向いている人の特徴とは?
納棺師に向いている第一の条件は、体力に自信があることです。
納棺は棺の運搬や長時間の立ち作業が多く、時には一日に複数件の現場を回ることもあります。
そのため、すぐにダウンしない体力が求められるのです。
二つ目は、遺体に触れるのに抵抗がないこと。
納棺師はプロとして、故人に敬意を払いながら遺体に触れなければなりません。
着替えや化粧、姿勢の調整など、手作業で細部まで整える工程が多く、感情に流されずに丁寧な対応ができる精神的な安定さが必要です。
三つ目は、細かな気配りができることです。
遺族は深い悲しみの中にあり、言葉に出さない小さな要望や雰囲気の変化にも気付く観察力が重要です。
上記の要素を兼ね備えている人は、納棺師として高い評価を得やすく、向いていると言えるでしょう。
どんな人だと納棺師に向いていない?
まず、体力に自信がない人は、現場の負担に耐えるのが難しくなります。
棺の運搬や遺体の移動は複数人で行いますが、それでも一定の力や持久力は必要です。
深夜や早朝の勤務も珍しくないため、不規則な働き方が苦手な方には厳しいでしょう。
また、感情の揺れが大きくなりやすい方は、精神的負担が重くなりがちです。
納棺の場は常に「死」と向き合う場所であり、遺族の悲しみや涙に触れる機会が多くあります。
感受性は必要ですが、感情をコントロールできる冷静さが不可欠です。
さらに、人と接するのが苦手な人も注意が必要です。
納棺師は作業員ではなく、遺族への説明や提案、進行の確認などコミュニケーションが重要な役割を担います。
上記の要素がある人は、納棺師の仕事には向いていないと言えるでしょう。
納棺師は女性でもやっていけるの?
納棺師というと男性の仕事という印象を持たれがちですが、最近では女性の割合も高くなっています。
理由としては、男性よりも女性の方が細やかな気配りをできる人が多いです。
そのため、女性だと故人の身支度や遺族への配慮に生かされやすいのです。
実際、女性納棺師はチームワークや気遣いを武器に、現場で欠かせない存在になりやすいと言えます。
力仕事に関しては、どうしても男性よりも劣る場合が多いです。
とはいえ、チームでの作業が基本なので、性別が大きな障害になることはありません。
以上のことから、女性でも納棺師は十分活躍できる職業だと言えるのです。
納棺師がきついと言われる理由に関する総まとめ
納棺師がきついと言われる理由について、振り返っておきましょう。
- 納棺師がきつい理由の第一は長時間の立ち仕事や棺の運搬など体力的負担が大きい
- きついと感じる要因には、遺体特有の臭いへの耐性が必要なことも含まれる
- 納棺師がきついのは、事故や変死など状態の悪い遺体にも対応しなければならないから
- 遺族の深い悲しみに立ち会いながら感情をコントロールする精神的負担が大きい
- 平均年収300〜400万円と給与水準が低めで、経済的に厳しい面がある
- 遺族から直接感謝の言葉を受ける瞬間が大きなやりがいとなる
- 状態の悪い遺体を綺麗に整え、お見送りできたときには充実感を感じる人が多い
- 多くの最期に立ち会うことで命の尊さや日常のありがたさを実感できる
- 国家資格は不要で、未経験からでも研修でスキルを身につけられる
- 高齢化社会の進行により納棺師の需要は今後も安定して増加傾向
- 体力があり、遺体に触れることに抵抗がなく、細かな気配りができる人に納棺師は向いている
- 体力に不安がある人、精神的に弱い人、人と接するのが苦手だと納棺師の仕事は厳しい
- 納棺師は女性の活躍も多く、細やかな感性や配慮が評価されやすい
納棺師が「きつい」と言われる背景には、体力的・精神的な負担の両方があります。
重い棺の運搬や長時間の立ち作業、深夜や早朝の勤務は身体に負担をかけます。
遺族の深い悲しみに立ち会う精神的プレッシャーや、遺体に直接触れることへの精神的負担も避けられません。
しかし、同時に遺族からの感謝・故人を美しく整えるやりがい・命の尊さを日々感じられる要素があります。
他の職種では得がたい、納棺師ならではの大きな魅力です。
ご自身の性格や強みを理解し、向いている要素を持っていれば、長く続けられるだけでなく、人生に深い意義をもたらす仕事になるでしょう。